焼き網をのせた天板の上の、オーブンで焼いたスペアリブ。表面は赤茶色の濃い焼き色に覆われ、天板に溶けた脂が少したまっている
料理科学

家庭のオーブンの科学:表示の温度と庫内の温度、熱風と輻射

地域
メキシコ・アメリカ・中南米
公開

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レシピどおりに「140℃で5時間」焼いたのに、まだ硬い。同じ「220℃で40分」なのに、前に焼いたときより焦げた。オーブンを使う料理で、こんな経験をしたことがある人は多いと思います。日本の家庭のオーブンレンジは、ボタンひとつで温度を決められます。それでも、庫内の温度が表示どおりとは限りません。

オーブンの中では、ヒーターや炎が庫内の空気と壁を温め、その熱が熱風・輻射(ふくしゃ)・伝導という3つの道で食材に届きます。どの道が強いかは、オーブンの種類や天板の段、扉を開けたかどうかで変わります。このブログのプルドポークやブリスケット、ポジョ・ア・ラ・ブラサは、どれも家庭のオーブンで焼く料理です。自分のオーブンのくせを知っておくと、焼き上がりが安定します。

表示の温度と庫内の温度は違う

オーブンは温度を「上げ下げ」して保っている

家庭のオーブンは、設定温度より下がるとヒーターを点け、上がると止める、を繰り返して温度を保っています。この仕組みをサーモスタットと呼びます。そのため、庫内の温度は一定ではなく、設定温度を中心に上下に揺れ続けています。

  • 揺れの幅:アメリカの料理研究機関「アメリカズ・テスト・キッチン(ATK)」によると、正しく調整されたオーブンでも、設定温度の上下14℃ほどを行ったり来たりします
  • 大きく揺れる例:温度計メーカーのThermoWorksは、177℃(350°F)に設定したオーブンが、上は204℃、下は149℃まで揺れることもあるとしています。1回の上げ下げには数分かかります
  • 平均そのもののずれ:ThermoWorksは、多くのオーブンで、平均の温度が設定から14〜28℃ずれているとしています。ATKは、同じ温度に設定したオーブンどうしで、50℃ほど違うこともあると紹介しています

センサーは食材の場所を測っていない

オーブンの温度センサーは、庫内の奥や壁の近くの1か所にあります。ATKは、センサーが食材を置く真ん中ではなく、じゃまにならない場所にあるため、庫内の真ん中の温度とは合わないことがあると説明しています。料理科学の研究チーム「モダニスト・キュイジーヌ」を率いるネイサン・ミアボルドは、センサーが食材から離れているほど誤差は大きく、220℃以上で15℃ほど、120℃のような低い温度ではそれ以上ずれることも多いと書いています。

ATKによると、たいていの料理は、平均の温度が14℃くらいずれていても問題なく焼けます。困るのは、それ以上ずれているときです。このブログのBBQの料理は、140℃前後の低い温度で何時間も焼きます。低い温度ほどセンサーの誤差が大きくなりやすいので、表示を信じきらず、中心温度で焼き上がりを決めています。

豚の肩肉を140℃で5〜7時間焼くプルドポークと、牛の胸肉を同じ温度で焼くブリスケットの作り方はこちらです。

家庭のオーブンで作るプルドポークノースカロライナ東部の本場のプルドポークを、燻製器ではなく家庭のオーブンで。豚肩ロースを140℃で焼き、中心温度91〜96℃でほろほろに。ドライ・ブライン、コラーゲンのゼラチン化、ストールの理由を料理科学で解説します。 家庭のオーブンで作るブリスケットテキサス中部のBBQの名物ブリスケットを、燻製器ではなく家庭のオーブンで。塩と黒こしょうだけで140℃で焼き、ブッチャーペーパーで包んで中心温度93〜96℃に仕上げます。ストール、休ませる理由、繊維を断つ切り方を料理科学で解説します。

温度の揺れと砂糖の焦げ

温度が上下に揺れると、いちばん困るのは砂糖を使う料理です。砂糖(ショ糖)は160〜170℃前後からカラメル化が進み、それを超えると黒く焦げて苦くなります。スペアリブのレシピで、砂糖の入ったラブを140℃の低い温度で焼き、甘いBBQソースは最後の短い時間だけ焼くのは、揺れの上の端でも焦げにくくするためです。

家庭のオーブンで作るBBQスペアリブアメリカのBBQの定番、豚のスペアリブを燻製器ではなく家庭のオーブンで。ドライラブをまぶして140℃で焼き、ホイルで包んで骨の間の肉を93〜96℃に。膜をはがす理由、砂糖のカラメル化、コラーゲンのゼラチン化を料理科学で解説します。

熱が食材に届く3つの道:熱風・輻射・伝導

熱風(対流)

オーブンの中の空気は、温まると上に昇り、冷えると下がって、ゆっくり回っています。この空気の流れで熱が運ばれることを「対流」と呼びます。料理科学者ハロルド・マギーは、オーブンで焼くことを「熱い壁からの輻射と、熱い空気の対流で食材を温める方法」と説明しています。

ただし、空気はとても軽く、熱を運ぶ力が弱い物質です。マギーによると、オーブンの空気の密度は水の1000分の1にもならず、熱い分子が食材にぶつかる回数がずっと少なくなります。じゃがいもは、ずっと高い温度のオーブンで焼くより、お湯でゆでるほうが早く火が通ることがあるのはこのためです。

ファンで風を回すコンベクション

ファンで熱い空気を強制的に回すオーブンを「コンベクションオーブン」と呼びます。BBQの科学で知られるミートヘッド・ゴールドウィンによると、動く空気は食材のまわりにまとわりつく冷えた空気の層をはがすので、止まった空気より速く熱が伝わります。マギーも、ファンで空気を動かすと熱の伝わり方が速くなり、焼き時間がかなり短くなるとしています。

ATKは、コンベクションの使い方を次のようにまとめています。

  • 温度:初めてのレシピでは、設定を14℃ほど下げてみる。ただし、機種によっては自動で下げるので、取扱説明書を確かめる。ATKの試験では、丸鶏や豚ヒレは温度を下げると焼き色が弱くなったので、肉のローストは下げなくてよいこともあります
  • 肉のロースト:牛の塊、丸鶏、豚ヒレは、どれもより深く、むらなく焼き色がつきました。丸鶏は温度を変えずに焼くと、10〜15分早く焼き上がりました
  • 表面が乾く:回る空気は食材の表面を乾かすので、焼き色がつきやすくなります。乾かしたくない料理やケーキには向きません

日本のオーブンレンジは、機種によって熱の出し方が違います。

  • 上下ヒーター式:庫内の上と下にヒーターがある方式です。パナソニックの1段で焼く機種などが、この方式です
  • 熱風コンベクション式:ヒーターとファンで熱風を庫内に回す方式です。シャープや日立の2段で焼ける機種などが、この方式です
  • ガスオーブン:リンナイは、ガス高速オーブンについて、ファンでガスの熱風を庫内に回し、焼きむらを抑えると説明しています。ガスが燃えると水蒸気ができるので、電気のオーブンより庫内が湿りやすくなります

輻射

輻射は、熱い物から出る赤外線が、空気を通らずに直接食材に届く熱です。オーブンの壁やヒーターは、熱くなると輻射熱を出します。ミートヘッドは、同じ空気の温度でも、輻射熱は対流より多くの熱を食材に届けると説明しています。ただし、熱源から離れるほど弱くなります。

ミアボルドによると、200℃以下では熱を運ぶのは主に対流で、もっと高い温度になるほど輻射の役目が大きくなります。また、壁は厚さやヒーターからの距離が場所によって違うので、温度も場所によって違います。ミアボルドは、壁の温度が250℃と270℃では、そこから出る輻射の強さが16%ほど違うとしています。

このブログで、仕上げにオーブンの「グリル(上火)」機能を使うのは、天井のヒーターの強い輻射を表面だけに当てるためです。アメリカ式のカルニタスは、蒸し煮にした肉をほぐして天板に広げ、上火で縁をカリッと焼きます。

家庭のオーブンで作るカルニタス(アメリカ式)アメリカの家庭で広まったカルニタスを、ラードを使わずに家庭のオーブンで。豚肩ロースをオレンジやスパイス、コーラと160℃で蒸し煮にし、ほぐして上火でカリッと焼きます。煮てから焼く理由、コーラの砂糖とメイラード反応を料理科学で解説します。

伝導

伝導は、触れている物から物へ、熱が直接移ることです。天板にじかに置いた肉は、天板に触れた面が伝導で焼けます。ミートヘッドによると、金属は空気よりずっと多くの熱をためて伝えるので、熱い焼き網に触れたところに焼き目がつきます。肉の内側では、表面から中心へ伝導でゆっくり熱が進みます。

このブログの塊肉のレシピで、天板に焼き網をのせ、その上に肉を置くのは、肉の下にも熱い空気を回して、天板に触れた面だけが煮えたり焦げたりするのを防ぐためです(Amazon|楽天)。

扉を開けた家庭のオーブンレンジの中で、角皿にのせた焼き網の上に置いた背開きの丸鶏。皮は半分ほどきつね色に焼けている

丸鶏を背中から開いて平らにし、網にのせて220℃で焼くペルーのポジョ・ア・ラ・ブラサの作り方はこちらです。

家庭のオーブンで作るポジョ・ア・ラ・ブラサペルーの国民食ポジョ・ア・ラ・ブラサを、回転式の窯ではなく家庭のオーブンで。丸鶏を背中から開いて前日に塩をすり込み、220℃で焼きます。ドライ・ブラインで皮をパリッとさせる理由や、マリネが効く範囲を料理科学で解説します。

予熱の意味と、扉を開けたときの温度

予熱が終わった合図は「空気が温まった」合図

オーブンの予熱は、思ったより時間がかかります。ミアボルドの計算では、庫内の空気そのものは、ヒーターの熱で数十秒あれば温まります。それでも時間がかかるのは、熱の多くが壁や天板を温めるのに使われ、温まった空気の一部が排気口から逃げていくからです。

日本のオーブンレンジは、庫内が設定温度になると予熱の終わりを音で知らせます。ATKは、オーブンの合図は早めに出ることが多いので、177℃以下なら20分以上、それより高い温度なら30分以上予熱するよう勧めています。鋳鉄の鍋や厚い器を入れるときは、温まるのにさらに時間がかかります。

予熱の音が鳴ってから少し待つと、壁や天板まで温まり、食材を入れたときに温度が下がりにくくなります。テックスメックスのナチョスは、220℃でたった6〜8分しか焼きません。焼き時間が短い料理ほど、予熱が足りないぶんの影響が大きくなります。

家庭のオーブンで作るナチョス1943年にメキシコ北部の国境の町で生まれたナチョスを、家庭のオーブンで天板1枚分。220℃で短時間に焼き、チーズを水分の壁にして具をのせます。チップスがしける理由と、水分の多い具を焼いた後にのせるわけを料理科学で解説します。

扉を開けると、熱い空気が出ていく

扉を開けると、庫内の熱い空気のほとんどが外に出ていきます。ミアボルドは、温度は一気に下がり、戻るまでに時間がかかると書いています。下がり方は条件によって違います。

  • 英語版ウィキペディア「リカバリータイム」の項目:扉を開けると、庫内の温度は最大で30℃ほど下がることがあるとしています
  • 料理科学者シャーリー・コリハー:著書『BakeWise』で、扉を30秒開けたままにすると、温度が80℃以上下がることもあると書いています(料理サイト「The Kitchn」の紹介による)

下がるのは主に空気の温度です。壁や天板、食材にたまった熱は残っているので、扉を閉めれば空気はまた温まり始めます。それでも、何時間も焼くBBQで何度も扉を開けると、そのたびに温度が下がり、焼き上がりが遅れます。扉を開けている時間を短くするには、肉に刺したまま外から温度が見られる置きっぱなしの温度計が便利です(Amazon|楽天)。

温度計の種類と選び方、肉への刺し方は、中心温度計の記事で詳しく解説しています。

中心温度計:塊肉を焼くときにいちばん大事な道具塊肉の火の通りを確かめる中心温度計の解説。オーブンの温度のずれや余熱で焼き時間が当てにならない理由、鶏肉・豚肉・牛肉・BBQの中心温度の目安、温度計の種類と選び方、正しい刺し方と氷水での校正が分かります。

天板の段と、庫内の広さ

上の段は焼き色がつきやすい

ATKによると、オーブンは下から温まり、熱い空気は上に昇って天井で反射するので、予熱したあとは上のほうが下より熱くなります。ATKのすすめる段の使い分けは次のとおりです。

  • 上の段:上の面にしっかり焼き色をつけたい料理。グラタンなど
  • 真ん中の段:熱がいちばんむらなく回る段。ふだんのローストチキンや、迷ったときの標準
  • 下の段:底にしっかり焼き色をつけたい料理。ピザなど

日本の2段のオーブンレンジでも同じです。日立は、2段で焼くときは上の段のほうが焼き色がつきやすいので、途中で上下の天板を入れ替えるとむらなく焼けるとしています。1段で焼くときも、途中で天板を取り出して前後を入れ替えると、焼きむらが減ります。

焦げ目をつけたいメキシコの焼きとうもろこしエローテは、熱源に近い上の段で焼きます。グラタンのように表面に焼き色をつけるマカロニ&チーズも、最後は最高温度かグリル機能で、上の面だけを焼きます。

家庭のオーブンで作るエローテメキシコの屋台の焼きとうもろこしエローテを、家庭のオーブンのグリル機能や魚焼きグリルで。焦げ目をつけてマヨネーズ、チーズ、タヒン、ライムで仕上げます。とれたてが甘い理由、焦げ目の香りのメイラード反応とカラメル化を料理科学で解説します。 家庭のオーブンで作るマカロニ&チーズ(マッケンチーズ)アメリカ南部の焼くマカロニ&チーズを家庭のオーブンで。ベシャメルにチェダーを溶かしたソースで硬めにゆでたマカロニを和え、焼き色をつけます。ソースが分離しない理由、マカロニを硬めにゆでる理由、焼き色のメイラード反応を料理科学で解説します。

庫内は思ったより狭い

日本のオーブンレンジの庫内は、塊肉を焼くには広くありません。メーカーの仕様では、たとえば次のような大きさです。

  • パナソニックの25Lの機種:幅32cm×奥行35cm×高さ22cmほど
  • シャープの30Lの2段の機種:幅40cm×奥行31cm×高さ23〜24cmほど

天井のヒーターと肉が近すぎると、上の面だけが焦げます。ミアボルドも、上火で焼くとき、熱源に近づけても食材の温度が上がるわけではなく、焼きむらが大きくなるだけだとしています。このブログの塊肉のレシピは、日本の家庭のオーブンに合わせて、肉の大きさを1.5〜2kgほどにしています。本場のプルドポークは3〜4kgの肩肉を丸ごと焼くことが多いですが、日本の家庭のオーブンには大きすぎ、焼き時間も長くなりすぎます。厚みのある塊を入れるときは、2段の機種なら下の段を使い、天井のヒーターとの間をあけてください。

扉を開けた小さなオーブンの中の、皮付き豚肩肉のロースト。皮は膨らんでパリッとしたきつね色になり、天井のヒーターとのすき間がせまい

皮付きの豚肩肉2kgを低温で焼いてから、最高温度で皮を膨らませるプエルトリコのペルニルの作り方はこちらです。

家庭のオーブンで作るペルニルプエルトリコのクリスマスに欠かせない豚肉のロースト、ペルニルを家庭のオーブンで。にんにくとアドボのマリネを詰め、150〜160℃で焼いてから高温で皮を膨らませます。クエリートができる仕組みとにんにくの香りを料理科学で解説します。

オーブンレンジの温度と運転時間の上限

最高温度は数分しか続かない

日本のオーブンレンジは、最高温度で焼ける時間が決まっています。メーカーの仕様や説明では、次のようになっています。

  • 250℃の機種:250℃の運転は約5分で、そのあとは自動で210℃に切り替わります(パナソニック、日立)
  • 300℃の機種:300℃の運転は約5〜10分で、そのあとは230〜250℃に切り替わります(シャープ、日立)
  • 長く焼くと下がる機種:パナソニックの小型の機種には、140℃以上で約60分を超えて運転すると、130℃に切り替わるものがあります

チチャロンやペルニルのレシピで、最後に「最高温度(230〜250℃)で15〜30分」としているのは、この切り替わりを見込んでいるためです。機種によっては、途中で210℃前後に下がったまま焼くことになります。皮がなかなか膨らまないときは、5〜10分ずつ延ばしてください。

家庭のオーブンで作るチチャロンメキシコのバラ肉のチチャロンを、油で揚げずに家庭のオーブンで。皮付き豚バラを下ゆでして一晩乾かし、低温と高温の2段階で焼いて皮をバリバリに。皮のコラーゲンのゼラチン化と、水蒸気で皮が膨らむ仕組みを料理科学で解説します。

1回に設定できる時間にも上限がある

オーブンレンジには、1回の運転で設定できる時間にも上限があります。たとえば日立のある機種の取扱説明書には「最大加熱時間(90分)」と書かれています。プルドポークやブリスケットのように5〜7時間焼く料理では、途中で運転が止まります。

このブログのBBQのレシピには「途中で止まったら、同じ温度に設定し直して続きを焼く」と書いています。止まったまま気づかないと、庫内の温度がどんどん下がります。長く焼く料理を作る前に、取扱説明書で最高温度の運転時間と、1回の最大の加熱時間を確かめておきましょう。

120℃の低い温度でゆっくり焼いてから、スキレットで脂を焼くブラジルのピッカーニャも、オーブンの温度のずれが焼き時間に出やすい料理です。

家庭のオーブンで作るピッカーニャ(シュラスコ)ブラジルのシュラスコで一番人気の牛肉、ピッカーニャ(イチボ)を家庭のオーブンで。120℃で中心温度50℃まで焼き、最後に脂の面をスキレットで焼くリバースシアで仕上げます。脂のレンダリングや粗塩を使う理由を料理科学で解説します。

最後の焼き色をつけるのに使う、鋳鉄のスキレットの選び方と使い方はこちらです。

鋳鉄スキレットとコマル:熱をためて焼き色をつける道具肉や野菜に焼き色をつけ、トルティーヤを温める、鋳鉄スキレットとメキシコのコマルを解説します。鋳鉄が熱をためこむ理由、焼き色をつけるメイラード反応と鉄の温度、シーズニングの仕組みと手入れ、サイズの選び方、日本でコマルの代わりに使えるものが分かります。

オーブン温度計で、自分のオーブンを測る

中心温度計とは役目が違う

オーブン温度計は、庫内の空気の温度を測る温度計です。肉に刺して中の温度を測る中心温度計とは、測っているものが違います。

  • オーブン温度計:オーブンが本当は何℃なのかを知るための道具。レシピの「140℃」に、自分のオーブンを合わせるために使います
  • 中心温度計:肉の中がどこまで焼けたかを知るための道具。塊肉を焼いて終わる料理で、焼き上がりを決めるのに使います

オーブンの温度が正しくても、肉の大きさや形で焼き時間は変わります。逆に、中心温度計があっても、オーブンが20℃低ければ、焼き上がりまでずっと長くかかります。2つの温度計は、役目を分けて使います。置きっぱなしのデジタル温度計の中には、肉に刺すプローブとは別に、庫内の空気を測るプローブが付いたものもあります。

測り方

ATKとThermoWorksのやり方を、日本のオーブンレンジに合わせてまとめます(Amazon|楽天)。

  1. 空のまま置く 庫内を空にし、オーブン温度計を真ん中の段(1段の機種は天板や網の真ん中)に置く。電子レンジの機能では金属が火花を出すので、オーブン機能で測るときだけ入れる。
  2. 予熱する よく使う温度(このブログなら140℃や200℃)に設定して予熱する。予熱の終わりの音が鳴っても、扉は開けない。
  3. 待ってから読む 針のダイヤル式は反応がゆっくりなので、予熱を始めてから40分以上たってから読む。デジタル式は30分ほどで読める。
  4. 平均を出す デジタル式は、10〜15分ほど表示を見て、いちばん高い温度と低い温度の真ん中を平均とする。ダイヤル式は、反応がゆっくりなぶん、そのまま平均に近い温度を示す。
  5. ずれを覚えておく 平均が設定より10℃高ければ、次から10℃低く設定する。ThermoWorksは、いくつかの温度で確かめておくよう勧めている。

ATKは、ダイヤル式なら設定の±6℃以内、その時々の温度を示すデジタル式なら±14℃以内に入っていれば、よく調整されたオーブンだとしています。熱風コンベクションの機能がある機種は、ThermoWorksのすすめに従って、熱風ありとなしの両方を測ります。ずれが分かったら、そのオーブンのくせとしてメモしておくと、どのレシピでも使えます。

ダッチオーブンに入れてオーブンで煮込む料理は、鍋が重く、温まるのに時間がかかります。鍋の選び方と使い方は、こちらの記事で解説しています。

鋳鉄のダッチオーブン:オーブンの煮込みに向く理由と選び方メキシコの煮込みやアメリカのBBQを家庭のオーブンで作るときに便利な、鋳鉄のダッチオーブンの選び方と使い方を解説します。オーブンの煮込みに向く理由、黒い鋳鉄とホーローとステンレスの違い、メキシコの銅や土の鍋、サイズと重さ、手入れ、つまみの耐熱温度が分かります。

まとめ

  • 家庭のオーブンは、サーモスタットで温度を上げ下げして保っている。庫内の温度は上下に揺れ、平均も設定から十数℃ずれていることが多い
  • 熱は熱風(対流)・輻射・伝導の3つの道で届く。ファンのある熱風式は表面が乾いて焼き色がつきやすく、上火は輻射で表面を焼く
  • 予熱の音は空気が温まった合図。壁や天板まで温めるには20〜30分ほど予熱する。扉を開けると空気の温度は大きく下がる
  • 上の段は焼き色がつきやすい。庫内は狭いので、塊肉は1.5〜2kgほどにして、天井のヒーターとの間をあける
  • 最高温度の運転時間と、1回の最大の加熱時間を取扱説明書で確かめ、オーブン温度計で自分のオーブンのずれを測っておく

もっと知りたい人へ

オーブンで焼く仕組みや、熱が食材に伝わる科学を詳しく知りたい人には、料理科学の定番の本があります。

マギー キッチンサイエンス(ハロルド・マギー『On Food and Cooking』の日本語版)(Amazon|楽天)

熱の伝わり方と温度計の使い方を、BBQの実験から解き明かしたミートヘッドの本もおすすめです。

Meathead: The Science of Great Barbecue and Grilling(Amazon|楽天)

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成したものです。