素焼きの深い器に入った赤いスープのポソレ。花のように開いた白いトウモロコシの粒と豚肉のかたまり。まわりにせん切りキャベツ、薄切りのラディッシュ、ライム、オレガノ、トスターダ
タコスとメキシコ料理

本場ポソレ・ロホのレシピ

地域
メキシコ西部(ハリスコ州)
分量
4〜6人分
公開

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ポソレ・ロホは、豚肉と大粒のトウモロコシを、乾燥唐辛子の赤いスープで煮込んだメキシコの料理です。煮えたトウモロコシの粒は、先がぱっくりと開いて、花が咲いたような形になります。食べる人が、せん切りのキャベツ、ラディッシュ、玉ねぎ、オレガノ、ライムを好きなだけのせ、パリパリのトスターダを添えて食べます。メキシコでは、独立を祝う9月15日の夜など、人が集まる日に大鍋で作るお祝いの料理です。

本場では、石灰で処理した白い大粒のトウモロコシを、花が開くまで2時間ほど煮ます。日本では、同じ処理をして煮てあるトウモロコシ、ホミニーの缶詰が使えます。豚肉をゆでてスープをとり、唐辛子のソースとホミニーを加えるだけなので、コンロの鍋ひとつで作れます。

本場のポソレとは

ポソレ(pozole)は、アステカの人々の言葉ナワトル語の「ポソリ(pozolli)」から来た名前です。メキシコの料理事典によると、さらにさかのぼると「トラポソナリ」という言葉で、「煮立った」「泡立った」という意味があります。

儀式の料理から、お祝いの料理へ

16世紀にメキシコに来たスペインの修道士ベルナルディーノ・デ・サアグンは、アステカの儀式で、いけにえにされた人の肉をトウモロコシと煮て、身分の高い人たちに配った料理を記録しています。トウモロコシは、アステカの神話で人間の体を作った材料とされ、この料理は太陽の再生の儀式と結びついていました。

スペイン人が来てから、この料理の肉は豚肉に置き換わりました。身分の高い人だけの料理ではなくなり、誰もが食べるお祝いの料理になっていきます。今では、9月15日の夜の独立記念の祝いに欠かせない料理です。大勢の人に一度にふるまえることも、お祝いに向いている理由です。

白、赤、緑のポソレ

ポソレには、大きく3つの色があります。

  • ブランコ(白):唐辛子を入れない、肉とトウモロコシだけの白いスープ
  • ロホ(赤):グアヒージョやアンチョなどの乾燥唐辛子のソースで赤くしたもの
  • ベルデ(緑):緑のソースを加えたもの

メキシコの旅行メディアによると、赤いポソレは、スペイン人が来たあとに西部、とくにハリスコ州やバヒオ地方で乾燥唐辛子を加えるようになって生まれました。ハリスコ州のポソレ・ロホは、ふつう豚肉で作り、メキシコでいちばん人気のあるポソレとされています。ほかにも、香辛料の効いたミチョアカン州のポソレや、豚肉の代わりに魚介を使う太平洋岸コリマ州のポソレなど、地方ごとの違いがあります。

ハリスコ州のテレビ局は、ハリスコ式のポイントを「肉をゆっくり煮て、濃いスープをとること」と、グアヒージョのおだやかな辛さとアンチョの色とコクの釣り合いだとしています。

大粒のトウモロコシ「カカワシントレ」

ポソレに使うのは、「カカワシントレ」という白い大粒のトウモロコシです。粒は丸くふっくらしていて、中はやわらかい粉質です。メキシコでは「ポソレ用のトウモロコシ(マイス・ポソレロ)」とも呼ばれます。

乾燥したトウモロコシは、まず石灰の水で煮て皮をはがします。これを「ニシュタマル」といいます。さらに、粒の根もとにある黄色い先の部分を、1粒ずつ取り除きます。この作業は「デスカベサード(頭を取る)」と呼ばれます。こうして準備した粒を、花が開くまで長い時間煮ます。メキシコには、ここまで済ませた「プレコシード(下ゆで済み)」のトウモロコシもあり、家庭のレシピでもよく使われます。

ポソレ・ロホのレシピ:材料(4〜6人分)

肉とスープ

  • 豚肩ロース(ブロック)(Amazon|楽天)800g
  • 豚スペアリブ(Amazon|楽天)500g
  • 水2.5L
  • 玉ねぎ1/2個(100g)
  • にんにく1玉(約50g)
  • ローリエ2枚
  • 塩小さじ2(12g)

ハリスコ州のレシピは、豚の肩肉、もも肉、あばら肉を組み合わせます。家庭によっては、豚の頭や背骨も入れます。骨付きの肉を入れると、スープにコクが出ます。

赤いソース

  • グアヒージョ(乾燥唐辛子)(Amazon|楽天)5本(約25g)
  • アンチョ(乾燥唐辛子)(Amazon|楽天)2本(約20g)
  • 熱湯(唐辛子を戻す)400ml
  • にんにく2片(10g)
  • 玉ねぎ1/4個(50g)
  • オレガノ(乾燥)(Amazon|楽天)小さじ1(1g)
  • クミンパウダー(Amazon|楽天)小さじ1/4(0.5g)

トウモロコシ

  • ホミニーの缶詰(楽天)2缶(1缶439g)

ホミニーは、ニシュタマルにしたトウモロコシの粒を煮て、缶に詰めたものです。日本では、輸入食品の通販で手に入ります。

トッピング

  • キャベツ(せん切り)1/4個(約250g)
  • ラディッシュ(薄切り)8〜10個
  • 白玉ねぎ(みじん切り)1/2個(100g)
  • オレガノ(乾燥)(Amazon|楽天)適量
  • ライム2個(くし形切り)
  • トスターダ(楽天)8〜12枚
  • チレ・デ・アルボル(乾燥、好みで)(Amazon|楽天)4本

ラディッシュは、日本の「二十日大根」と同じ野菜です。トスターダは、コーントルティーヤを平らなまま揚げたり焼いたりして、パリパリにしたものです。

道具

  • 大きめの厚手の鍋、またはダッチオーブン(容量5L以上):豚肉をゆでてスープをとります(Amazon|楽天)
  • 鋳鉄のスキレット:唐辛子を焼きます(Amazon|楽天)
  • ミキサー、またはハンディブレンダー:唐辛子をソースにします(Amazon|楽天)
  • 目の細かいざる:ソースとスープをこします
  • 深めのスープ皿:たっぷりのスープとトッピングが入る器を使います

作り方

  1. 肉を切る

    豚肩ロースを5cmほどの大きさに切る。スペアリブは、骨と骨の間で切り分ける。

  2. 肉をゆでる

    鍋に肉と水を入れて強火にかける。沸騰したらアクを取り、玉ねぎ、横半分に切ったにんにく、ローリエ、塩を加える。ふつふつと静かに煮立つくらいの弱火にし、ふたを少しずらしてのせて、肉がやわらかくなるまで1時間半〜2時間ゆでる。

  3. 唐辛子を焼く

    肉をゆでている間に、グアヒージョとアンチョのへたと種、白いわたを取り、平らに開く。何もひかないスキレットを中火で熱し、唐辛子を押しつけるようにして片面10〜15秒ずつ焼く。香りが立てば十分。黒く焦がさない。

  4. 唐辛子を戻す

    焼いた唐辛子をボウルに入れ、熱湯400mlを注いで皿で押さえ、20〜30分おいてやわらかくする。

  5. ソースを作る

    唐辛子を戻し汁ごとミキサーに入れ、にんにく、玉ねぎ、オレガノ、クミンを加えて、なめらかになるまで回す。目の細かいざるでこして、皮のかけらを除く。

  6. 肉を取り出す

    肉がやわらかくなったら取り出し、骨を外して、ひと口大に裂く。スープはざるでこして、玉ねぎ、にんにく、ローリエを除き、鍋に戻す。表面に浮いた脂が多ければ、半分ほどすくい取る。

  7. スープを赤くする

    スープを中火にかけ、5のソースを加えて混ぜる。ふつふつと煮立つくらいで10分ほど煮て、スープを深い赤色にする。

  8. ホミニーと肉を加える

    ホミニーを缶から出してざるにあけ、さっと水で洗う。スープにホミニーと肉を加え、弱火で30〜40分煮て、粒の先が開き、スープの色がなじむまで煮る。スープが減って具がひたひたより少なくなったら、湯を足す。味をみて塩で調える。

  9. トッピングを用意する

    煮ている間に、キャベツ、ラディッシュ、玉ねぎを切り、ライムをくし形に切る。チレ・デ・アルボルを使うときは、へたを取ってスキレットで30秒〜1分、香りが立つまで焼き、指で細かくもむ。

  10. 盛りつける

    深めの皿にポソレをたっぷり注ぐ。トッピングとトスターダはテーブルに並べ、食べる人が好みでのせる。

料理科学:トウモロコシの粒が花のように開く理由

石灰で煮て、皮をはがす

乾燥したトウモロコシの粒は、ペリカルプ(果皮)という硬い皮に包まれています。ポップコーンを食べると歯に挟まる、あの薄い皮です。このままでは、いくら煮ても粒は開きません。

ポソレのトウモロコシは、まず石灰(水酸化カルシウム)を溶かした水で煮て、ニシュタマルにします。国連食糧農業機関(FAO)の報告書は、石灰を加えたときのいちばんはっきりした効果は、皮がはがれやすくなることだとしています。石灰水の強いアルカリが、皮の細胞壁にあるヘミセルロースという繊維を分解するからです。石灰で煮る時間が長いほど、トウモロコシのでんぷんも水を抱えてやわらかくなる方向に変わっていきます。

ニシュタマルの仕組みと、皮がはがれる理由、栄養の変化は、こちらの記事で詳しく解説しています。

ニシュタマル:トウモロコシを石灰で煮る理由トルティーヤに欠かせない、乾燥トウモロコシを石灰水で煮るニシュタマル。アルカリが皮をはがす仕組み、グルテンのないマサがまとまる理由、ナイアシンとカルシウムの変化、香りへの影響、日本で手に入るものまでを料理科学で解説します。

頭を取ると、水の入り口ができる

メキシコでポソレ用のトウモロコシを準備するときは、皮をはがしたあとに、粒の先の黄色い部分を取り除きます。この部分は、粒が穂の芯についていた根もと(花柄=かへい)です。

メキシコの研究者が、カカワシントレをポソレ用に処理する方法を比べた研究では、根もとを取ると、粒の下の部分に開いた口ができ、そこから水が入って、中のでんぷんの糊化(こか)が速く進むとしています。糊化とは、でんぷんの粒が水を吸いながら加熱されて、膨らんでやわらかくなることです。根もとを取ったトウモロコシは、煮る時間と燃料が少なくて済み、やわらかいポソレになりました。ただし、花が開く粒の割合そのものは、根もとを取っても増えませんでした。

でんぷんが膨らんで、粒がはじける

同じ研究では、煮ている粒が膨らんではじけ、花のような形になることを「フロレアード(花が開く)」と呼んでいます。皮のなくなった粒の中で、でんぷんが水を吸って膨らむと、粒は内側から押し広げられて、裂けるように開いていきます。

コンロにかけた鍋で煮える、赤いスープのポソレ。白いトウモロコシの粒の多くが上の部分ではじけて、花のような形に開いている

研究で使ったカカワシントレは、粒の中身の8割ほどがやわらかい粉質の部分で、硬いガラスのような部分(角質)がありませんでした。研究者は、これを粒のやわらかさと結びつけています。また、粒が大きく丸いほど、花が開くまでの時間が短いという報告もあります。カカワシントレが「ポソレ用のトウモロコシ」と呼ばれるのは、大きく丸い粒と、水を吸いやすいやわらかな中身を持っているからです。

煮る時間は長くかかります。この研究では、石灰で煮たあとの粒が花開くまで、沸騰させて1時間40分〜2時間半ほどかかりました。伝統的な方法では、石灰で煮た粒を16時間ほど置いて、しっかり水を吸わせてから煮ます。

缶詰のホミニーは、最後に入れて味を吸わせる

ホミニーの缶詰は、ニシュタマルにして皮を取り、煮てから缶に詰めたものです。すでに水を吸ってやわらかくなっているので、何時間も煮る必要はありません。手順8で、肉がやわらかくなってから最後に入れて30〜40分煮るのは、粒を温めながら、赤いスープの色と味を吸わせるためです。ハリスコ州のレシピでも、煮てあるトウモロコシを使うときは、スープに加えて30〜40分、粒が開いて色を吸うまで煮ています。

缶詰の粒は、煮るうちにさらにふっくらと開いていきます。好みのやわらかさになったら火を止めます。

本場との違い

  • トウモロコシ:本場は、白い大粒のカカワシントレを使います。ここで使うホミニーの缶詰は、黄色いトウモロコシで作った「ゴールデン・ホミニー」です。白いポソレらしい見た目にはなりませんが、同じニシュタマルのトウモロコシなので、粒の食感と香りは近くなります。
  • 肉:本場では、豚の頭や背骨も一緒に煮て、濃いスープにします。日本で手に入りやすい豚肩ロースとスペアリブで作っています。
  • キャベツ:ハリスコ州では、せん切りのキャベツか、レタスをのせます。どちらでもかまいません。

グアヒージョとアンチョの違い、乾燥唐辛子の焼き方と戻し方は、こちらで詳しく解説しています。

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食べ方

ポソレは、トッピングを自分でのせて完成させる料理です。せん切りのキャベツとラディッシュはシャキシャキした歯ざわりを、玉ねぎは辛みを、ライムは酸味を加えます。オレガノは、指でもみながら上からふりかけると、香りが立ちます。辛くしたい人は、焼いたチレ・デ・アルボルをもんで散らします。

木のテーブルに並んだポソレのトッピング。せん切りキャベツ、薄切りのラディッシュ、刻んだ玉ねぎ、ライム、乾燥オレガノ、粉唐辛子、トスターダ。右手前に赤いポソレの器

  • トスターダ:パリパリのトスターダを、スープと交互にかじります。好みで割ってスープにのせてもかまいません。
  • お祝いの日に:メキシコでは、9月15日の独立記念の夜に、家族や友人と大鍋のポソレを囲みます。赤、白、緑のポソレの色は、国旗の色に通じるともいわれます。

同じように乾燥唐辛子のスープで肉を煮込む、ハリスコ州生まれのビリアの作り方も紹介しています。

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石灰で処理しない、生のトウモロコシを焼いて食べる屋台のエローテもどうぞ。

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保存

  • 冷蔵:保存容器に入れて3日程度。冷えると表面の脂が固まるので、気になれば取り除きます
  • 冷凍:スープごと小分けにして1か月程度。冷蔵庫で解凍し、鍋で温め直します
  • ホミニーは時間がたつとスープを吸って膨らむので、温め直すときは湯を少し足します
  • トッピングの野菜は、食べる直前に切ります

もっと知りたい人へ

ポソレをはじめ、メキシコ各地の家庭料理を本場の作り方で学びたい人には、メキシコ料理研究の第一人者ダイアナ・ケネディの本がおすすめです。

ダイアナ・ケネディ『The Essential Cuisines of Mexico』(Amazon|楽天)

トウモロコシのでんぷんの糊化など、穀物の科学を詳しく知りたい人には、料理科学の定番の本があります。

マギー キッチンサイエンス(ハロルド・マギー『On Food and Cooking』の日本語版)(Amazon|楽天)

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成したものです。