アルミホイルを敷いた天板にのった、焼き上がった縦割りの牛骨髄と、トルティーヤ、ライム、サルサ・ベルデ
タコスとメキシコ料理

家庭のオーブンで作るタコス・デ・トゥエタノ(牛骨髄のタコス)

地域
メキシコ(メキシコシティほか)
分量
4人分
公開

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タコス・デ・トゥエタノは、牛の骨の中の骨髄(トゥエタノ)を焼いて、トルティーヤにのせて食べるタコスです。縦に割った骨を高温で焼くと、中の骨髄はとろりとやわらかくなり、縁からふつふつと泡が立ちます。それをすくって温かいトルティーヤにのせ、玉ねぎとシラントロ(パクチー)、サルサ、ライムで食べます。メキシコシティのタケリア(タコス屋)では、炭火で焼いた骨髄を、牛肉のタコスに添えて出す店もあります。

本場では炭火で焼きますが、家庭のオーブンでも、高温で短く焼けば同じように仕上がります。大事なのは焼く時間です。焼きが足りないと骨髄は固く、焼きすぎると脂が溶けて流れ出し、骨の中がやせてしまいます。その境目を見極めるのがこの料理のポイントです。

本場のタコス・デ・トゥエタノとは

トゥエタノ(tuétano)は、スペイン語で骨髄のことです。メキシコの経済紙エル・フィナンシエロは、メキシコの料理事典の定義を引いて、トゥエタノを「肉屋で扱う動物の骨に残る脂肪の組織」で、とくに牛の脚の骨のものだと紹介しています。

昔は肉屋のおまけだった

同じエル・フィナンシエロの記事によると、肉屋でよく見かけるのは、骨髄の多い牛の大腿骨(もも)の骨です。すね肉(チャンバレテ)に付いた骨からも取れます。昔は肉屋がただでくれるものでしたが、人気が出て、今はお金を出して買う食材になりました。

骨髄はメキシコ全土で、とくにタコスで食べられています。スープで煮た骨から骨髄を取り出し、サルサをかけて小さなタコスにする食べ方もあります。南部のチアパス州では、薄い干し肉のセシーナに塗り、北部のコアウイラ州やヌエボ・レオン州では、タコスや、厚い生地に具をはさむゴルディータにします。カップで食べるトウモロコシ料理エスキーテに入れることもあります。

メキシコシティのタケリアで

メキシコシティの情報誌チランゴは、骨髄の料理を何度も特集しています。ローマ地区の「ラ・ラモナ・デ・ロス・トゥエタノス」は、2020年12月に4人の友人が開いた骨髄の専門店です。骨髄は炭火で焼きます。タコスは、スアデロ(牛のおなかの部位)、リブアイ、アラチェラ(ハラミ)から肉を選び、どの注文にも骨髄が3本付きます。骨髄だけを頼むと、手作りの青いトウモロコシのトルティーヤと、バッタのサルサ(サルサ・デ・チャプリン)が付いてきます。

店の共同経営者は、いちばん苦労したのは「骨髄が足りないこと」だと話しています。メニュー全体に新鮮な骨髄をたくさん、切らさず仕入れるのが、大きな課題だったそうです。2021年1月には、スアデロとアラチェラのタコス10個ずつ、計20個を輪のように並べ、骨髄4本を添えた「タコスのロスカ」を期間限定で出していました。

ほかにも、市の東部にある「タコス・ノルテーニョス・ブランキータ」は、炭火で焼いた骨髄に、サルサ・ベルデ、トルティーヤ、ライムを添えて出します。2018年の特集では、ポランコ地区の「ロサ・ネグラ」が、焼いた骨髄4本に、チレ・デ・アルボルのソースと焦げ目をつけたトルティーヤを添えて出し、客が自分でタコスを作る店として紹介されています。

タケリアの炭火の網の上で焼かれる縦割りの牛骨髄

トルティーヤにすくう、肉にのせる、脂で温める

骨髄の食べ方には、いくつかの形があります。

  • すくってトルティーヤに:焼いた骨から、熱いうちに骨髄をすくってトルティーヤにのせます。いちばん基本の食べ方です。
  • 肉のタコスにのせる:焼いた牛肉のタコスの上に、骨髄をすくってのせます。ラ・ラモナのように、肉のタコスと骨髄を一緒に出す店があります。
  • 溶けた脂でトルティーヤを温める:ニューヨークのメキシコ料理店「ラ・エスキーナ」などを手がけた料理人リチャード・アンプディアは、自分のレシピ「チャルーパス・デ・トゥエタノ」で、骨髄を焼いたときに天板にたまった脂を集め、その脂でトルティーヤを、カリカリにならないようやわらかく温めています。もとになったのは、子どものころ週末に父親とクエルナバカへ向かう道で、アフスコの山の屋台で食べたタコスです。その骨髄は、骨髄のスープ(ソパ・デ・メドゥーラ)を作る道ばたの大鍋でゆでたものだったといいます。

チランゴの特集には、エスカンドン地区の小さな食堂「ノー・メ・オルビデス」の、骨髄の脂で炒めた細いパスタのスープ(ソパ・デ・フィデオ)も出てきます。骨髄から溶け出した脂も、メキシコでは大事な味として使われています。

タコス・デ・トゥエタノのレシピ:材料(4人分)

骨髄

  • 牛骨髄(縦割り)(楽天)4本(長さ15cm前後)
  • 氷水(血抜き用)1〜1.5L
  • 塩(血抜き用)大さじ1と1/2水1Lに25g
  • 粗塩(仕上げ用)(Amazon|楽天)小さじ1/2〜1

縦割りの骨髄は、通販の精肉店で冷凍で売られています。「カヌーカット」「マロウボーン」とも呼ばれます。手に入らないときは、輪切りの骨髄(楽天)でも作れます。焼き時間の違いは作り方の中に書きます。

肉(好みで)

  • 牛ハラミ(ブロック)(Amazon|楽天)300g
  • 塩小さじ1/2(3g)

タコス

  • コーントルティーヤ(Amazon|楽天)12枚
  • 白玉ねぎ(みじん切り)1/2個(100g)
  • シラントロ(パクチー)(粗みじん切り)1束(約20g)
  • ライム2個(くし形切り)
  • サルサ・ベルデ、またはサルサ・ロハ適量

道具

  • 天板とアルミホイル:骨を切り口を上にして並べます。溶けた脂を受けます
  • 焼き網:輪切りの骨を使うときは、網にのせて立てます(Amazon|楽天)
  • 鋳鉄のスキレット:ハラミを焼き、トルティーヤを温めます(Amazon|楽天)
  • 中心温度計(輪切りで焼くとき、あれば):太い輪切りの骨髄の中心の温度を確かめます(Amazon|楽天)
  • 竹串、またはアイスピック:焼き上がりを確かめます
  • 大きめのボウル:骨を塩水に浸します

作り方

  1. 解凍する

    冷凍の骨は、焼く前日に冷蔵庫に移し、12〜24時間かけて解凍する。

  2. 塩水に浸す

    ボウルに氷水を入れ、塩を水1Lに25gの割合で溶かす。骨を沈めてラップをかけ、冷蔵庫で12〜24時間おく。4時間ごとに水を捨て、新しい氷水と塩に替える。時間がないときは省いてもよい。その場合は、骨の表面と切り口の血を流水でさっと洗う。

  3. 水けをふく

    骨を取り出し、キッチンペーパーで水けをふく。浸した水は流しに静かに捨て、ボウルとシンクのまわりを洗う。

  4. オーブンを予熱する

    オーブンを230〜250℃に予熱する。天板にアルミホイルを敷き、骨を切り口を上にして並べる。傾く骨は、丸めたアルミホイルを下にかませて水平にする。

  5. ハラミの下ごしらえをする(好みで)

    ハラミの表面の白い膜と余分な脂を取り、厚いところは包丁で開いて厚さ1cmほどにそろえる。両面に塩3gをふる。

  6. 骨を焼く

    縦割りの骨は15〜20分焼く。12分たったら一度様子を見る。輪切りの骨は、網に立てて20〜25分焼く。

  7. 焼き上がりを見極める

    竹串を骨髄の中心に刺し、やわらかいバターのように抵抗なく通れば焼き上がり。骨と骨髄の境目がふつふつと泡立ち、天板に少し脂が流れ出ているのが目安。縦割りの骨はこの見た目で判断し、それ以上は焼かずに取り出す。太い輪切りの骨で中まで火が通ったか心配なときは、中心温度計で中心が75℃に届いてから1分以上たったことを確かめる。骨髄が溶けて骨の中で液体になっていたら焼きすぎ。

  8. ハラミを焼く

    骨を焼いている間に、スキレットを強火で煙が出るまで熱し、ハラミを片面2〜3分ずつ、濃い焼き色がつくまで焼く。まな板で5分休ませ、繊維を断つ向きに細かく刻む。

  9. トルティーヤを温める

    スキレットを中火にし、天板にたまった骨髄の脂を小さじ1/2ほどひく。トルティーヤを片面20〜30秒ずつ、やわらかくなって少し膨らむまで温める。脂は1〜2枚ごとに足す。

  10. 盛りつける

    焼いた骨を皿にのせ、骨髄に粗塩をひとつまみずつふる。トルティーヤ、刻んだハラミ、玉ねぎ、シラントロ、ライム、サルサを並べる。骨髄をすくってトルティーヤにのせ、好みでハラミを重ね、玉ねぎ、シラントロ、サルサをのせてライムを搾る。骨髄は冷めると固まるので、焼きたてを食べる。

料理科学:骨髄を溶かしきらずに焼く

骨の中にあるのは脂肪の組織

骨髄には、血をつくる赤い骨髄(赤色骨髄)と、脂肪の多い黄色い骨髄(黄色骨髄)があります。メキシコの料理事典がトゥエタノを「脂肪の組織」と定義しているように、料理に使う脚の骨の骨髄は、脂の多い骨髄です。モルモットの黄色骨髄を調べた1967年の研究は、黄色骨髄は体のほかの場所の脂肪組織とよく似た組成をしていて、典型的な脂肪組織だと結論しています。骨髄を食べるというのは、骨の中にしまわれた脂肪を食べることです。

牛の骨髄の脂を調べた日本の研究(1982年)によると、おもな脂肪酸はパルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸で、とくにオレイン酸が多いとされています。オレイン酸は、牛脂に多いステアリン酸やパルミチン酸よりずっと低い温度で溶ける脂肪酸です。冷えた骨髄は固いのに、焼くととろりとやわらかくなるのは、脂が温まって溶け始めるためです。

高温で短く焼くのは、溶かしきらないため

英語圏の骨髄のローストのレシピも、高温で短く焼きます。ジェニファー・マクラガンの料理書『オッド・ビッツ』をもとにしたアメリカの料理サイト、リーツ・クリナリアのレシピは、230℃(450°F)で15〜25分です。英国の雑誌カントリー・ライフが「史上最高のレシピ」のひとつとして紹介する、料理人ファーガス・ヘンダーソンの骨髄のサラダも、熱いオーブンで約20分です。焼き上がりは「ゆるく、やわらかいが、溶けてはいない」状態で、「長く置きすぎると溶けてしまう」と書いています。

骨髄はほとんどが脂なので、焼きすぎると溶けて、骨の外へ流れ出ていきます。リーツ・クリナリアは、低い温度でじっくり焼いても、同じように脂が溶けて流れ出てしまうと説明しています。高温で短く焼くのは、そうなる前に焼き上げるためです。メキシコの家庭のレシピにも、220℃に予熱したオーブンで12分焼き、180℃に下げて仕上げるものがあります。

焼き上がり。骨の中で骨髄がやわらかく半透明になり、縁に小さな泡が立っている

焼きすぎの手前で止める目安は、手順7の3つです。

  • 竹串がバターのように通る:中心まで熱が届き、骨髄がやわらかくなったしるし
  • 縁がふつふつ泡立つ:メキシコの家庭のレシピは、骨と骨髄の境目が泡立ち始めたら焼き上がりとしています
  • 天板に少し脂が出ている:リーツ・クリナリアも、骨髄が少し骨から流れ出始めたことを目安にしています。骨髄が溶けてなくなるほど流れ出ていたら焼きすぎです

縦割りの骨は、切り口を上にすると、骨が舟のように骨髄を受け止めます。この記事で縦割りの骨を使うのは、骨髄をすくいやすいからです。

塩水に浸して、血を抜く

手順2で骨を冷たい塩水に浸すのは、血抜きのためです。リーツ・クリナリアのレシピは、塩を入れた氷水に12〜24時間浸し、4時間ごとに塩水を替えます。こうすると血と汚れが抜けて、金属のような嫌な味がせず、きれいな色の骨髄になると説明しています。

ただし、同じレシピは、この手順は見た目のためのもので、省いても害はないとも書いています。浸すと見た目がきれいになり、食べるときに固まった血のかたまりに当たらずにすむ、という理由です。時間があれば浸し、なければ表面の血を洗い流すだけでもかまいません。浸している間は、必ず冷蔵庫に入れておきます。

生の骨髄は生肉と同じに扱う

骨の中にあっても、生の骨髄は生の肉と同じように扱います。厚生労働省は、家畜の腸の中には腸管出血性大腸菌やサルモネラ属菌などの食中毒の原因となる細菌がいて、と畜のときに肉や内臓に付くことがあると説明しています。生の肉についた菌が、手や調理器具を通してほかの食べ物に広がることを「二次汚染」といいます。

  • 触れたら洗う:生の骨に触れた手は、トルティーヤや野菜にさわる前に石けんで洗います
  • 器具を分ける:厚生労働省は、バーベキューでは箸などの器具の使い分けや洗浄が不十分になりやすいと注意しています。焼く前の骨にさわったトングや皿を、焼いたあとの盛りつけに使いません
  • 浸した水に注意:血抜きの水は、流しの外に飛ばさないように捨て、ボウルとシンクを洗います
  • しっかり加熱する:厚生労働省は、肉は中心温度75℃で1分間以上の加熱が重要だとしています

では、骨髄でも中心温度を測る必要があるのでしょうか。東京都の食品安全FAQは、塊の肉では食中毒菌は主に切った表面についているので、表面(側面も)をしっかり加熱すれば、食中毒になる可能性を大きく減らせると説明しています。

縦割りの骨髄で外に出ているのは、上を向いた切り口です。切り口は230〜250℃のオーブンの熱を直接受けるので、骨と骨髄の境目がふつふつ泡立つころには、表面は75℃をはるかに超えています。縦割りの骨髄は厚みが少なく、上からも、熱くなった骨の側からも熱が入ります。縦割りなら、中心温度計を刺すより、手順7の見た目で判断するのがこの記事のやり方です。中心温度にこだわって焼き続けると、骨髄が溶けて流れ出てしまいます。リーツ・クリナリアのレシピも、骨髄の中心が63℃(145°F)になれば焼き上がりとしています。

ただし、同じFAQは、菌は時間がたつと肉の内部へ入り込むので、ゼロにはできないとも書いています。子どもや高齢者は中までしっかり焼いて食べるように、としています。子どもや高齢者が食べるときや、骨髄の塊が太い輪切りの骨を焼くときは、中心温度計で中心が75℃に届いてから1分以上焼いてください。

ハラミを強火で焼いてつく、濃い焼き色と香ばしさは、メイラード反応によるものです。焼き色と香りの正体は、こちらの記事で詳しく解説しています。

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本場との違い

  • 焼き方:この記事で紹介したラ・ラモナやブランキータは、骨髄を炭火で焼きます。家庭版はオーブンの高温で焼くので、炭の香りはつきませんが、溶かしすぎずに焼き上げる加減は同じです。
  • 骨の切り方:この記事では、すくいやすい縦割りの骨を使っています。輪切りの骨でも同じように作れます。
  • トルティーヤ:ラ・ラモナでは、手作りの青いトウモロコシのトルティーヤを使います。家庭版は、市販の冷凍のコーントルティーヤを、骨髄の脂で温めて使います。
  • サルサ:バッタのサルサは日本では手に入りにくいので、サルサ・ベルデやサルサ・ロハを添えます。

食べ方

いちばんのおすすめは、焼きたての骨髄をすくい、脂で温めたトルティーヤにのせて、玉ねぎ、シラントロ、サルサ・ベルデ、ライムで食べる食べ方です。骨髄のこってりした脂を、ライムとサルサの酸味、玉ねぎの辛みが引き締めます。粗塩をひとつまみふると、骨髄の甘みが立ちます。

  • 肉のタコスと一緒に:刻んだハラミのタコスに骨髄をのせると、赤身の肉に脂のコクが加わります。
  • 自分で作るタコス:骨とトルティーヤ、薬味をテーブルに並べ、食べる人が自分ですくってタコスにします。

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保存

  • 焼いた骨髄:焼きたてがいちばんおいしく、冷めると固まります。残ったら骨ごとラップに包んで冷蔵庫で1〜2日。150℃のオーブンで、温まるまで焼き直します。高い温度で温め直すと溶けてしまうので注意します
  • 塩水に浸した生の骨:水けをきってラップをかけ、冷蔵庫で24時間以内に焼きます。すぐに焼かないときは冷凍し、3か月以内に使います
  • 天板にたまった脂:こして小さな容器に入れ、冷蔵庫で1週間ほど。トルティーヤを温めたり、炒め物に使ったりできます

もっと知りたい人へ

脂が溶ける温度や、肉の脂肪組織の仕組みを詳しく知りたい人には、料理科学の定番の本があります。

マギー キッチンサイエンス(ハロルド・マギー『On Food and Cooking』の日本語版)(Amazon|楽天)

メキシコの屋台や市場のタコスを、本場の作り方で学びたい人には、リック・ベイレスの本がおすすめです。

Rick Bayless's Mexican Kitchen(Amazon)

出典

本文は上記の情報源を参考に、独自に再構成したものです。